梅毒をもつ女性が妊娠したり、妊娠中に梅毒にかかると、お腹の赤ちゃんに梅毒が感染し、『先天梅毒(せんてんばいどく)』となります。
先天梅毒とは、先天梅毒をもって生まれた子の症状や治療法、治療をすれば完治はするのか、温泉でも感染はするのか、感染の予防法などを解説、梅毒の感染者や先天梅毒児が増えている現在についてお伝えします。
目次
先天梅毒とは
梅毒をもつ女性が妊娠したり、妊娠中に梅毒にかかると、お腹の赤ちゃんに梅毒が感染し、『先天梅毒』となります。
先天梅毒の検査は
梅毒の検査は病院で調べるか、郵送で検査できるものがありますが、妊娠している可能性がある女性は病院で妊娠の検査をし、妊娠しているとわかった場合、梅毒の検査は義務なので妊娠初期(4~12週)に必ず血液検査をします。(病院によっては妊娠後期、出産後に検査をするところもあります)
先天梅毒の治療は
結果が梅毒にかかっていると判断された場合、治療を始めると99パーセントの確率で先天梅毒を阻止できます。
治療の方法は抗生物質の投与をします。
先天梅毒児とは
『先天梅毒』をもって生まれてきた子を『先天梅毒児』といいます。
先天梅毒児となってしまう可能性は
妊娠初期の検査で梅毒が陰性となった場合、感染の可能性は低いですが、梅毒は感染がわかるまでに2~4週間ほどかかるため、その間に検査した場合は陰性となるので判断ができません。
また検査後に梅毒にかかった場合も治療ができません。
また、妊娠の可能性があっても病院を受診しない場合や、定期的に病院の受診をしない場合も、検査や治療ができずに梅毒に感染したままとなります。
他にも赤ちゃんの発育の経過を知ることは大変重要な役割を持っているので、検診は定期的に受けるようにしましょう。
前述したとおり妊娠後期や出産した後に再び梅毒の検査を行う病院もありますが、不安な場合は申し出てもう一度検査を受けるようにしましょう。
先天梅毒を治療しないでいると
妊娠初期に適切な治療を受けないでいると、多くの場合、赤ちゃんは子宮の中で死亡し、流産や早産となります。
また妊娠初期でも死亡せずそのまま胎児が成長したり、検査の後、妊娠後期などに梅毒にかかった場合はそのまま出産となり、のちの検査で『先天梅毒』が発覚し先天梅毒児となってしまします。
先天梅毒児の症状は
早期先天梅毒
生まれてきた子が先天梅毒児だった場合、出生した直後は症状がはっきりとでないので判断しにくいですが、乳幼児期に症状が現れてきます。
早期先天梅毒の主な症状
- 皮膚、粘膜の病変(内出血にり紫色の斑点ができたり、黄疸のため黄色っぽくなる)
- 肝脾腫(肝臓や脾臓が大きく腫れておなかがふくらむ)
- 鼻炎や肺炎(風邪に似た症状)
- 肝炎(肝臓の炎症によって細胞が壊され、肝臓の機能が低下する)
- 骨への影響(骨軟骨片の分離や炎症により痛みを伴う)
- 貧血
- 脱毛
- 爪囲炎
など。
晩発性先天梅毒
もう少し成長し、小学生や思春期になってから症状が現れることもあります。
晩発性先天梅毒の主な症状
- 角膜炎(目の炎症で痛みや違和感がでる)
- 関節炎
- ゴム腫(ゴムのような弾性をもつ腫瘍)
- 神経病変(体調不良や体の麻痺、言葉に詰まったり、人格変化など)
- ハッチンソンの三徴(角膜炎、難聴、歯の形成不全)
など。
先天梅毒児の治療は
妊娠中と同じ、抗生物質の投与で治療します。
治療すれば完治するのか
早期発見、早期治療できれば早めに治療が終わり完治します。
目安としては感染の第1期と言われる3~9週間の間で治療できれば、抗生物質の服薬は2~4週間程度です。
少し遅れてしまう、第2期の9週間~数か月だと服薬の期間が長くなり4~8週間程度となります。
感染から2年以内に十分な量の抗生物質を服薬すれば、完治するといえます。
2年以上経過すると完治するかどうかは定かではないようです。
しかし赤ちゃんや小さい子供の場合、大人より症状が重症化することが考えられるので、早期発見、早期治療に越したことはありません。
梅毒自体は完治しますが、検査方法によっては抗体に反応し陽性反応が出ることもあります。
梅毒は温泉でも感染する?
梅毒はトレポネーマという種類の菌が粘膜(目、鼻、口、耳、陰部、肛門など)や傷口に接触すると感染するもので、不特定多数の人が入った温泉に入ったからといって感染することはほぼありえません。
温泉で感染するとすれば、病原体を持った人が座った椅子にすぐ座るなどして、粘膜や傷口と接触してしまうと感染する可能性はゼロではないということが言えます。
梅毒に感染しないよう予防するには
梅毒は主に性行為で感染します。
梅毒以外にも他の性病や、望まない妊娠などを防ぐため、避妊具を使用しましょう。
また口に感染による症状がある場合、キスでも感染するので、感染の自覚がなくてもパートナーと一緒に検査を受けることも大切です。
温泉など公共の施設では、椅子をお湯で流してから使用するなど、粘膜や傷口と接触することをしないよう心がけましょう。
梅毒の感染者が増えている
昔は梅毒というと恐ろしい病気とされていましたが、現在は抗生物質(ペニシリン)で治る病気になりました。
しかし現在、若い女性を中心に梅毒に感染した患者が増えているのです。
学会の研修基幹施設のうち、回答した257施設(41%)の内容を分析したところ、先天梅毒の赤ちゃんは、11~13年はゼロだったが、14年に8人、15年は13人と増えた。うち5人が亡くなり、抗菌薬で治療したものの、後遺症が残った赤ちゃんも4人いた。
先天梅毒の赤ちゃんを産んだ妊婦の約8割は、定期的な妊婦健診を受けていなかった。
引用元読売新聞
回答した病院が全体の41パーセントなので、実際はもっと多いことが予想されます。
そして主な原因としては定期的な妊婦健診を受けていなかったことにより治療ができなかったことと考えられます。
若い人たちや、これから妊娠を考えている方たちは、梅毒の恐ろしさを知り、適切な行動を心がけていくべきだと感じました。